427年続く冨樫家の23代目が冨樫護さん。屋号「市左衛門」を継いでいます。 だだちゃ豆を作り始めたのは5代前から。白山だだちゃ豆の伝統を古くから守り続け、その美味しさは村一番と評判です。 そんな「市左衛門」を作る冨樫さんにだだちゃ豆栽培についてお話を伺いました。
■独自の土作りでうまれる、豊かな土壌
冨樫さんのだだちゃ豆の美味しさの秘密は、独自の土作りにあります。 土作りのカギとなるのが肥料作り。 油かすやカニ殻などを発酵させた肥料を、毎年1トンも土壌に混ぜ込むのだそうです。
「菌の状態に合わせて、スコップで1日3~4回は混ぜるかな。 周りの人は機械でこの作業をしているんだけどね。」
この豊かな土壌で育つだだちゃ豆は、風にも負けない強い苗に育ちます。 苗は40cmと広めの間隔を取って植えるそう。 ゆったりと植えることで、太陽の光を存分に浴び、豊かな味わいのだだちゃ豆を実らせます。
■収穫のタイミングは、目で見て味わって
「まず目で見て、実入りの状態を確かめる。そして生の豆をかじってタイミングをはかる。 収穫が遅くなると実が固くなってしまうから、見極めは難しいんだよ。」
冨樫さんいわく、収穫に適した一番よい状態なのはわずか2~3日間。 その時期に収穫できるよう、毎日畑に行き、チェックすることは欠かせないのだそうです。
「収穫は朝もやがかかって風がない時にするんだ。こういう時に採ると美味しいんだよ。」
先祖伝来の手法で、旬の一番よい時機を見極めて、早朝に収穫していきます。
■子どもを育てるように大事にだだちゃ豆を育てる
種を植え、定植し、生長して収穫する… そんな農作業の工程を「面白い。生長を見守るのが一番楽しい。」と話す冨樫さん。
「毎年考えているのは、安定した味をどうやって提供していくかということ。 新しいテクニックをどんどん取り入れる、というよりも、まずはお客様に美味しいと言ってもらえるのが一番だからね。」
朝採りの冨樫さんのだだちゃ豆は、生で食べてもほんのりと甘さを感じるほど。 先祖から脈々と続く伝統の手法をしっかりと守りながらも、 「一番美味しいだだちゃ豆を届けるにはどうしたらよいか?」という 冨樫さんのだだちゃ豆への情熱と工夫が、「市左衛門」の美味しさを生み出しているのだと感じた取材でした。