「早生豆」を代々守り続けてきた長五郎4代目の伊藤静雄さんに だだちゃ豆栽培についてお話を伺いました。
■「早生豆」の元祖
「お盆にうまいだだちゃ豆が食べられるって評判になったんだ。」
たまたま8月上旬という早い時期に豆をつけた苗。
伊藤家がこの種を大切に育てたことで、早生豆の栽培が現在まで続いてきました。
「早生豆は収穫が早い分、寒い時期に種を撒くから、 温度に気をつけないと芽が出なかったりするんだ。
天気が悪い日が続くと、 半分しかサヤがつかなかったり、糖度が低かったりするのも難しいところだな。」
伊藤さんは、人一倍手入れに気を遣い、 早生豆ならではの栽培の難しさと向き合っています。
■大切な「種」
「種用の苗を植えるのは一番最後。 9月の涼しい時期に取れた種が、次の年に美味い豆に育つんだ。
あちこちから種を売ってくれって言われるよ。うちのは渡さないけどね。」
味のいい豆をつくる農家はたちまち評判になり、種を売って欲しいという依頼も多いそう。
伊藤さんは他の人には決して譲らず、自らの土地で家の味を守り続けています。
■美味しいだだちゃ豆の条件とは
「甘いばかりが美味いってことじゃないだろう? 肥料をやれば甘くはなるが、そうじゃない。
目指しているのは、豆の本来の美味しさ。
これがだだちゃ豆だ!っていう、昔ながらのコクや香りなんだよ。」
理想の味を目指して、だだちゃ豆栽培を続ける伊藤さん。
長年続けていても、毎年何かしらの反省点があるのだそうです。
「雨が多くてもだめ、天気が良すぎてもだめだし、風が吹きすぎても、吹かなくてもだめ。
肥料も水もやりすぎはよくないし、何事もバランス良くがいいんだ。
それが難しくて、だからおもし ろいんだよな。」
そう笑顔で語る姿からは、だだちゃ豆栽培を心から楽しんでいることが伝わってきました。
熱心にだだちゃ豆と向き合い続ける伊藤さんだからこそ、美味しいだだちゃ豆が作り出せるのだ、と実感した取材でした。