【取材日記】7代目「甚兵衛」阿部金一さん ~「手植え」と「苗の間隔」にこだわって~

抜群のコク、甘み。究極の豆を作り続ける7代目「甚兵衛」。 ツウをもうならせる深い味わいのだだちゃ豆「甚兵衛だだちゃ豆」の生産者、阿部金一さんに、だだちゃ豆栽培についてお話を伺いました。

■こだわりの手植え、手収穫


「苗はすべて、手で植えているんだ。時間はかかるけどね。 苗と苗の間隔が広いでしょ。この植え方ができる機械は、今のところまだないんだよ。」

 
阿部さんの畑の苗は、45センチ間隔でゆったりと植えられています。 これは一般の豆畑の倍以上の間隔。 日がよく当たり、生き生きとした苗が育つ昔ながらの植え方です。
 
「収穫も人の手でやるよ。やっぱり人の手は信用できるし、機械よりも早いんだよ。 天気が悪くて機械が入れないから収穫は待ってくれ、なんてことにはならないでしょ。 人の手での収穫なら、そういう心配もないからね。」
 
アルバイトの人に来てもらい、15人ほどで早朝に収穫するという阿部さん。 機械に頼らず、人の力を信頼する方法に強いこだわりを感じました。

 
 
■全国の産地との交流

「新潟に行って豆畑を見てきたことがあるけど、育て方が全然違うのがおもしろいよ。 北海道の農家とお互いの豆を交換して食べてみたりもしてるよ。」
 
阿部さんは全国の様々な産地と交流を持ち、情報交換を行っています。
 
「いろんな豆があるけど、やっぱりだだちゃだね。コクが違うよ。」
他の産地の豆を知ることで、よりだだちゃ豆への想いも強まっている様子でした。
 
 

■“やめられない、とまらない”味を目指して

「甘すぎる豆は飽きるでしょ。口に入れたとき、最初の甘さはしっかり、噛んでいくうちにコクが出てきて、気づいたら2個3個と次々手が伸びちゃう。 そういう“やめられない、とまらない”って豆が理想だな。 それがだだちゃ豆本来の風味、美味しさなんだよ。 お客さんに『昔の味だ』って言われたときは感動したな~。」
 
阿部さんは理想の味をしっかりと持っています。 付き合いの長いお客さんも多く、その方々の声が聞こえてくるのが楽しいのだそう。
 
基本を大切に、代々受け継ぐ技と味を守り続ける阿部さん。 味に対する確固たる自信と、美味しい豆をお客さんに届けたいという強い想い… だだちゃ豆栽培にかけるプライドと情熱を、ひしひしと感じた取材でした。