冬こそ熱い大山の酒【第三蔵・加藤嘉八郎酒造】

加藤嘉八郎酒造取締役の加藤嘉晃さん。後ろの絵は創業当時の加藤嘉八郎酒造です。

大山を代表する酒蔵になる!―加藤嘉八郎酒造の挑戦―

こんにちは、清川屋の渡部です。
いよいよ2/24は大山の酒蔵・新酒まつりですね!・・・分かってはいましたが、前売りチケットが即日完売で買えませんでした(涙)買えた方は楽しんできてくださいね。ご感想お待ちしております。

さてさて、今回は大山地区4酒蔵の一つ、加藤嘉八郎酒造さんを訪れました。山形の人なら「酒は大山、愛の酒」というキャッチコピーを聞いたことがあるかもしれませんね。

今回、加藤嘉八郎酒造取締役の加藤嘉晃さんに酒蔵を案内していただきました。4代目社長の加藤有造さんの息子さんですが、日本酒好きが高じてこの道に入ったと言う自他ともに認めるお酒好きです。

加藤嘉八郎酒造さんのお酒は国内・国外で数々の賞を受賞しています。

「創業は1872年(明治5年)なのですが、大山4軒の酒蔵の中では一番の新参者です。大山で一番最後にできた酒蔵なので、創業者はいつか大山を代表する酒蔵になってやる!という意気込みで銘柄を「大山」にしたそうです。」と語る加藤さん。

意気込みもさることながら、地域に尽くすという意識も加藤嘉八郎酒造さんの根底にあります。大山地区には、大山公園という6.6haに及ぶ広大な公園があります。昭和恐慌(1930~1931年)での失業者対策として、2代目社長(加藤嘉八郎有邦氏)が8年かけて造園し、その後町に寄贈したものです。今では4600本もの桜咲く名所としても知られています。

「人と酒、人と人の調和を目指す」―言葉通りの歴史を重ね、加藤嘉八郎酒造は山形県内でも指折りの出荷量を誇るようになっていくのです。

(余談ですが)加藤嘉八郎酒造のご先祖はかの名将⁉

実は、加藤嘉八郎酒造さんのご先祖は、熊本の戦国武将として有名な加藤清正。実は、加藤清正の死後、息子の加藤忠広は改易(領地没収)に合い、熊本から連れてきた生母や少数の部下と共に生涯、鶴岡市丸岡で余生を過ごしました。その忠広の子孫が、大山で酒造りを始めたのが加藤嘉八郎酒造の始まりなのだそう。戦国武将の気概が酒造りにも発揮されたのでしょうか。

タンク内をかき混ぜるブレードの調整や温度管理を行う制御盤。
加藤嘉八郎酒造で独自開発したオリジナルの醸造装置です。

品質のためならなんでもやる!なんと自社開発!?

加藤嘉八郎酒造さんは、様々な種類の日本酒を醸造しておりますが、最も人気なのが「特別純米酒・十水(とみず)」です。十水とは、江戸時代からある伝統的な仕込み方法の一種。米の旨味がよく出る仕込み方法ですが、出来上がりの量が少ないことと、発酵の管理が難しいのが難点です。そこをカバーするために、加藤嘉八郎酒造さんでは品質の向上のための自社開発や、外部の良い技術を積極的に取り入れています。

例えば、
①酒蔵内でもろみや麹を運ぶのに、それまでは人が手で運んでいたのを、パイプを使って送り込むことで、酸化劣化を最小限に抑えられるようにする。
②均等にお酒を攪拌したり、温度を0.2度の精度で管理できるようにする「OSタンク」という丸底タイプのタンクを独自開発。

などです。その根底には「今より美味しいお酒を、手ごろな価格でたくさんの人に届けたい」という意識の顕れです。加藤嘉八郎酒造のお酒が国内・国外で高い評価を受け、数多くの賞を受賞していることからも、その品質の高さが分かります。

お米は全量手洗い(衝撃)タイマーで時間を計りながら吸水時間を調整しています。

先ほどの話とは逆に、手間で品質が向上することには、とことん手間をかけます。仕込み用の水は、月山付近にある赤川の上流水をタンクに詰めて、トラックで毎日3往復して運んでいるのだそう。「以前は大山の水を使っていたのですが、あるとき味が変わってしまったのでやめたんです」。

また、搬入したお米は自社で持っている精米工場で低温精米するのですが、その日その日で米の乾燥具合が違うため全て手洗いしています。「酒造りで一番大変なところですね。一番寒い時期なので水は冷たいし」とさすがの加藤さんも苦笑い。

加藤嘉八郎酒造さんのお米使用量4000石=400万合=60万kg~~~⁉仕込期間は20人ほど在席しているとはいえ、こんな途方もない量、機械で洗えないんですか!?「その日の天気とか、ロットとか、搬入した米の種類とかで米の水分量が全然違うので、赤外線分析器で確かめながら、都度洗いや給水の時間を細かく調整するんです」とのこと。

加藤嘉八郎酒造で開発した、底が丸い酒タンク「OSタンク」。この独特の形状がムラのない発酵に繋がります。
酒に対してまっすぐ。

人の手でするところは思いっきり手仕事。味を突き詰めているのが加藤嘉八郎酒造さんの真骨頂なのかもしれません。

今しか味わえない、搾りたて&生原酒の限定「十水」

さてさて、最後に加藤嘉八郎酒造さんのおすすめの新酒を教えてください!
「搾りたて生原酒の十水、はどうでしょう?普段の十水と違って、水を加えたり味を調整していない冬季限定の新酒です。元々蔵人のお楽しみ用として内々で作っていたのですが、お客様も飲みたいという声が出てきたので、最近一般に販売するようになったんです」これはレアなお酒ですね。十水ファンが喜びそうです。

試飲させていただくと、おお!香りが華やかでトロピカル~!でも味わいは十水のすっきりとした米の美味しさが味わえて、一度で二度おいしいような気分になれます。「だんだん熟成されてくるとまろやかになってこれも美味しいですよ」とのこと。原酒なのでアルコール度数は普段の十水より高めの18度、飲みやすいのでうっかり飲みすぎると大変なことになりそう・・・。

「こころづくし山形 初春号」掲載 加藤嘉八郎酒造さんの日本酒

冬期限定生原酒 特別純米酒 十水

しぼりたての「十水」を無濾過無調整のまま瓶に閉じ込めました。
仕込みでは原料処理や製麹、仕込み温度等を大山流のスタンダードタイプで行い、濃醇でジューシーな味わいの中に、“やわらかさ”を意識して醸しました。


一番右が「梅酒 咲くやこの花」、その隣が「冬期限定生原酒 特別純米酒 十水」

ただの梅酒と思うなかれ、山形銘菓の「アレ」が決め手

「この梅酒、実は「のし梅」と「十水」で出来てるんです」と次に紹介されたのが最近新登場した梅酒「咲くやこの花」。

「のし梅」とは山形名物の梅菓子のことで、中でも山形市の佐藤屋という菓子店が有名なのですが、そこの梅ピューレを仕入れしているのだそう。その梅も、梅農家と佐藤屋が契約し、樹が樹上で完熟したら佐藤屋さんが出向いて全部収獲しているこだわりのもの。それが入っているならどれだけ美味しい梅酒になるのか!気になります。

「中身の約4割が梅ピューレです。これに「十水」と砂糖を瓶に入れて手作業で振り混ぜて作っているんです」なんだかカクテルみたいな梅酒ですね。「そうなんです!元々「ふるふる」というカクテルのような日本酒を開発していて、その経験があってできた梅酒なんです。どうせ作るなら他にない梅酒を作りたくて」といたずらっ子のような顔で語る加藤さん。

試しに試飲させていただくと・・・確かに香りも味も「のし梅」!トロッとした濃厚な梅の甘さと香りの中にほのかな日本酒の旨みがあります。「甘いのが好きな方はそのままでもいいのですが、辛党はこれを「十水」で倍量に割って飲むのもおすすめです」おすすめのままに梅酒と同量の十水を注いで飲むと・・・梅酒から、梅の香りが効いた旨い日本酒に変身!渡部は断然割って飲む派!「あとは温めて飲むと梅の酸味がまろやかになってまた違う味わいになりますよ」

こちらもオススメ!加藤嘉八郎酒造さんの梅酒

【梅酒】咲くやこの花

山形銘菓「乃し梅」が、なんと梅酒になりました。
芳醇でキレのある味わいの「大山十水(とみず)」に、山形銘菓「乃し梅」に用いる「佐藤屋」の完熟梅を合わせ、これまでにない香り高くかつキレのある梅酒に。完熟梅丸ごと使うからこその果肉感を楽しめます。



「作り手だけが目指す味だけじゃなくて、飲む人の声を聴きながら商品を開発していきたいですね。その上で加藤嘉八郎酒造らしいお酒を目指していきたいと思っています。」と語る加藤さん。初代の意気込みはしっかり受け継がれているようで、今後の加藤嘉八郎酒造さんのお酒も楽しみです。

この記事で紹介した商品はこちら

加藤嘉八郎酒造

山形県鶴岡市大山地区に酒蔵を構える、明治5年創業の老舗酒蔵です。 発酵中の菌たちの「ためいき・といき」に耳をすませて、人と酒、人と人の「調和」を醸しだすような酒造りを行っています。

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