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こんにちは、清川屋の和嶋です。
2月末の話になりますが、毎年お母さまの笑顔を彩る「母の日さくらんぼ」に使用する、ハウス栽培さくらんぼを育てている農家さんの川越さんの元にお邪魔しました。
そもそも、ハウス栽培と露地栽培のちがいって?
農場にお邪魔する前に…ハウス栽培と露地栽培の違いについて説明します。
さくらんぼの育て方は、ざっくり3タイプに分かれています。
①ハウス栽培・・・巨大なビニールハウスの中を暖めてさくらんぼの生育を促成したもので、主に母の日用などに出荷され、4~5月が旬です。
②無加温栽培・・・ビニールハウスの中で育てるのはハウス栽培と同じなのですが、暖房はつけずに窓の開閉だけで温度管理するもの。最盛期(6月下旬~末)より若干早めに旬を迎えます。
③露地(テント)栽培・・・その名の通り外で育て、旬は6月下旬~末です。露地栽培の中でも、贈答用品質のさくらんぼは実が大きくなるとビニールハウスの上部だけテントをかけて雨にあたらないように丁寧に育てます。テント栽培はじっくり樹上で完熟させるので、最盛期の中でも旬が遅めです。
今回お会いしに行った川越さんは、ハウス栽培さくらんぼを育ててなんと30年以上!ベテランですね…!
いざ、ハウス栽培さくらんぼのビニールハウスへ!
農場に入ってまず目に入るのが、さくらんぼの樹を覆う大きなビニールハウス。
さくらんぼは通常の場合、露地のさくらんぼの栽培でもハウスをかけますが、
温室栽培の場合はビニールハウスの中で加温をして温度調整をしながら収穫期を早めます。露地のさくらんぼの場合、雨からさくらんぼを守るためにかけられ、
雨に当たってさくらんぼの実が割れたりして劣化するのを防ぐ役割があり、調温するための目的ではない点が異なります。
また、露地栽培の場合は2月~3月に剪定を行った後に芽かきをし、日本を代表する桜のソメイヨシノの開花からおくれること2週間ほどあとの4月下旬ごろに満開を迎え、出荷は6月初旬ごろから始まるのですが、
温室栽培さくらんぼの場合、冬場に剪定作業を行った後は芽かきを行わず、3月上旬ごろには既に開花を迎えます。
ハチを飛ばすことによって受粉作業を行い、結実させることによって、4月下旬から出荷が可能になるんです!
○○が無いとダメ?ハウス栽培さくらんぼ はとても繊細!
川越さんに今年のさくらんぼの状況をお伺いすると、
「今年は、花の開花がそろわず、受粉がうまくいくか心配…!おそらく満開になるのは、3月上旬位かな。」
とのお声が@_@
お邪魔した2月末頃の時点では、花芽は膨らんできているものの咲いているところもあれば、咲いてないところもあるものの、大部分が咲いてない状態でした。
対策としてはビニールハウス内を温かくするために、時間帯で温度設定し、自動で暖房が入るように機械を調整しています。
今は、1日のうち複数段階でセットしていて朝6時、8時、15時、21時の4段階で調整し、基本的にはずっと暖房は入れっぱなしの状態です。
また、ハウスの天井もハウス内が一定の温度になると自動で解放なるようになっていますが、ビニールハウス内が25度以上になると花芽が焼けてしまう危険があるため、要注意らしいです!
ちなみに、冬でも天気のいい日、日中の気温が7度くらいで日が差していると、
密閉しているとハウス内の気温は、35度近くなるので、冬でも開放しないとダメだとか。温度の調整の仕方によって、収穫時期をコントロールするのが難しい、ハウス栽培のさくらんぼ。
また、山形県は全国で3番目に燃料費が高いため、その点も栽培において悩みどころの様子…💦
ハウスさくらんぼは、開花から収穫まで約60日程度。露地より時間がかかります。
すこし意外に思えますが、なんでも常にビニールがかかっているため、
温度上がっても直射日光が届きにくく、どうしても生育には時間がかかってしまうようです。
暖かいだけではだめで、天井を開けるくらいの温度と日が差さないと生育も悪くなるし、さくらんぼのいい色も来ない…。改めて、難しい果物なのだと実感しました。
実を付けるにも一苦労 ハウス栽培は「大変」がいっぱい!
川越さんのハウス佐藤錦は、平成元年から栽培しており、今年で36年くらいになるようです。農家歴は約50年くらい。もともと桃農家から始めリンゴ農家、そこからさくらんぼ農家となって今に至ります。
他の農家さんもこぞってハウス栽培をするほど、平成元年頃はハウス栽培しやすい環境だったようです。
さくらんぼ農家として、露地栽培とハウス栽培、どちらが大変かお伺いすると
「露地よりもハウスさくらんぼの方が大変だぁ~。」というお声。
川越さんは4月下旬から5月いっぱいくらいまでハウスさくらんぼを収穫しており、朝5時ごろから収穫を始めるのですが、それぞれの木を回り、いいところを選んで収穫しているので、栽培と同じく手間がかかるそう。
他にも大変なポイントを挙げると
①さくらんぼは自家受粉ができないため、品種をかけ合わせて受粉させないといけない。露地であれば他の畑から花粉が飛んでくる可能性もあったりするが、ハウスは基本的には無いためミツバチを飛ばすことでハウス内で受粉させなくてはならないこと。
②土壌水分も重要で、乾燥気味だと受粉もうまくかないため、開花時期にあわせて、ハウス内にも散水しないといけない。
土壌水分を上げて、湿度を上げる。ハウスの場合、朝はすごく湿気を持つが、日中はカラッと乾燥する場合がおおく、受粉をする日中にいかに水分管理もするかが重要なこと。
また、さくらんぼの受粉を促すために他の品種である「紅秀峰」の剪定した枝を水に差して開花させ、それを佐藤錦の木の枝にぶら下げて置いたりして、受粉するように工夫をこらすこともしています、が、それでも受粉しないこともあるのだとか…!
試行錯誤の上!だから美味しい「母の日さくらんぼ」
「さくらんぼって食うものでねえべ。見で「あぁ~」と感動するもんだ」
「こんなちっこい果物で、こんなに手がかかるものねぇべ~」
と語る川越さん。
なるほど、太陽に照らされて実る真っ赤な粒は、食べる…というより先に
「なんてきれいなんだろう!」という感動が沸き起こります。
実際、たまにハウス栽培を見せてほしいと観光客が来るそうですが、食べていいよとお金をいただいても川越さんが声をかけるまで口にしない人が殆どなのだとか。
今回、ハウスさくらんぼを栽培、収穫する上での沢山の苦労話をお伺いしましたが
「さくらんぼはやっぱり佐藤錦だと思う。」
「苦労して育てたさくらんぼをたくさんの人に遠慮なく味わってほしい。」
と川越さんは終始笑顔で話してくださいました。
2024年の清川屋の母の日さくらんぼは5月8日から5月12日の期間限定お届け。
さくらんぼ農家さんの手間暇がかかったさくらんぼを是非、お母さまに向けて感謝と共に届けてみてはいかがでしょうか。