驚きの経歴!?バラ農家さんが育てるスイカ【ブラックジャック】〈7/12産地情報〉

夏の味覚として代表的な果物であるスイカ。
そんな中でも特徴的なビジュアルを持つ【ブラックジャック】を取扱う、山形県村山市にある「農穣 おく山」さんに取材に行ってきました!
園主である奥山祐さんは、なんと「Rose Cheek」という会社にてバラを使った化粧品や食用バラを取り扱うバラ農家さんでもあります。
「スイカとバラってそんなに合わさらない印象なんだけど…」
そんな疑問を解決するために投げかけた質問に、園主の奥山さんは朗らかな笑顔で答えてくれました。
なんと、奥山さん自身も、話を進めるうちにびっくりするような経歴が明らかに…!

お話を聞くために「Rose Cheek」さんの事務所にお邪魔したところ、入った瞬間バラの香り!
棚にはスキンケアに使う石鹸やアロマ、食品など幅広くバラを活用した商品がずらりと並んでいました。
バラの香りってキツイ匂いのイメージがあって苦手かも…と危惧していた清川屋スタッフでしたが、この場所にただようバラの香りは柔らかく、嫌な匂いが全くしないことにまず驚き。
「バラって合成香料のイメージが強いので、周りの人にも『えっ!?バラってこんな香りなの?』と驚かれることが多いですね。自然な香りを嗅ぐ機会が少ないんだと思います。」
と答える奥山さん。
同行スタッフの中には
「ここのバラのスキンケア商品を奥さんにプレゼントしたんだ~」
という話も出て、確かにこの香りならつけている本人も周りも穏やかに良い香りと思えるような、自然なバラの香り方をしていました。

 

この自然な香りのバラのエキスを抽出するために「Rose Cheek」さんでは、世界有数のバラ産地であるブルガリアからエキスを抽出する機械を輸入しています。
なんと、この機械が導入されているのは日本でここにしかないのだとか。
「スキンケア用に使用する1㎖のバラのエキスを抽出するのにバラの花びらは4~5kgは必要で、今年の花びらの収獲量は850kgでした。」
「朝4時から夜8時まで手摘みでバラの花びらを大急ぎで収穫しても1日で採れる量は70~80kgが限界。
なので今年はバラの摘み取り体験やワークショップを開いたり、手伝いの募集をかけたところ、意外と反響がありました。来年もまた形を変えて皆に楽しんでもらいつつ、労働力を確保したいです(笑)」
最終的にはスキンケア用と食用のバラ、併せて3~4トンは作りたいと語る奥山さん。そんなにいっぱい作っても売上の利益は全体の1割ぐらいなのだとか。
「だからうちはバラ農家じゃなくて、スイカ農家なんですよ!」
と、スイカ栽培をしている理由を、奥山さんは自分が農家を始めたきっかけも交えて答えてくれました。

奥山さんのまさかの経歴 バラ農家さんがスイカ栽培を始めるまでの〇年間は…

「実はずっと農家の仕事をしていたわけではなくて、高校卒業後は東京で3年間ダンスの仕事をしていたんですよ。」

ダンス!?とまさかの農家とは程遠いイメージのお仕事の名前が出てきて騒めく清川屋スタッフたち。話は続き…

「でも、将来欲しいお給料の額を考えた時にダーツでなく親の仕事を継ごう、と思ったんですが、そのまま農家継ぐだけじゃダメだ!と一念発起したんです。」
「円形脱毛症になりながら大学受験をして大学に入りました。辛かったですね(笑)大学卒業後は生協の宅配サービス会社に入社して農作物のバイヤーとして4年間在席し、農作物流通のノウハウを勉強させていただきました。」
「農家を継いだのは2015年ですね。なので、農家歴は10年ぐらいです。農家を継いだ当時はスイカは取り扱っていなかったんですよ。」

奥山さんのお父さんは当時、山形県村山市に残る最後のバラ農家さん。
2000年ぐらいから村山市の町おこし的に始まったバラ栽培でしたが、
農家さんがどんどん辞めて行き、奥山さんのお父さんが最後の農家さんになりました…が、お父さん自身も採算が合わないので辞めたがっていたとのこと。
奥山さんはお父さんが地域のことを考えてバラを作っているのを知っていたので、その意思を継ぎたいとバラ農家を継ぐことになりました。
継いだ当初は食用バラを作っていた奥山さんでしたが、食用バラは需要が限られており、現在は少しずつ需要を掘り起こしている真っ最中ではあるものの、当時は市場や小売店に卸して売れるような商品では無い状態でした。
加えて、バラの収獲は利益度外視…そんな中でも利益を出すためにまず始めたのがスイカの栽培だったのです。

日本一のスイカ農家さんに弟子入り こだわりのスイカ生育方法

「この近くに日本一のスイカを作る名人の農家さんがいて、そういう人の近くなら地理的に美味しいスイカを作れるだろう、と思ったんです。
そして、その人に弟子入りしてスイカつくりを学びました。現在ブラックジャックも含めて8種のスイカを育てています。」
と語る奥山さん。

奥山さんの農園がある村山市の畑は寒暖の差が大きく、最上川に囲まれているので冷気が溜まらず霜が降りにくいことがスイカ栽培に適しているとのこと。
それまでは取引先に「作ってほしい」と言われた品種を作っていたが、奥山さんの畑のスイカの栽培方法に合っている品種を探した結果この8種に落ち着いたのだとか。

名人のスイカの作り方が独特で、苗を低温で発芽させ育てるというのが特徴の一つ。
普通は発芽温度は20~25℃4日程度で発芽させるが、奥山さんの畑は15度ぐらいで10~15日かけて発芽させるというもの。
生育期間は普通の倍かかるが、根が深く毛細根の量が多いので、病気になりにくく土中の栄養を取り込みやすい丈夫な苗に育ちます。
病気になりにくい=糖度を保ちやすくなるため、結果として美味しいスイカが出来上がるそうです。

 

「根が地面の浅くに張るようなかたちだと、例えば大雨が降った時や干ばつが起きたときダイレクトに被害を受けちゃうので、いろんな災害に弱くなるんですよね。」
「なのでいかに根を土深くまで張り巡らせて色んな土の中の栄養素を取り込むことによって、スイカの実を大きくすることが出来るんです。」

それほどまでにスイカの根の生育は奥山さんの畑でのスイカづくりで重要なもので、たまにちゃんと根が伸びているか不安になって掘り起こすこともあるのだとか…。

「ギリギリ芽が出るような低温を維持することと水分を管理する、この2点が日本一のスイカ農家さんに教えてもらっていたことです。」
「教科書に載っているような通常の発芽方法は大きく異なるため、他の農家さんはこの方法をめったにやりたがらない。失敗したら1年がダメになっちゃうので(笑)」
「だから日本一のスイカ農家さんのやり方に、少しだけ教科書通りの方法を混ぜちゃったりするんだけど、それだと失敗しちゃうんですよね。だから僕はその年単位の失敗を繰り返して日本一のスイカ農家さんのやり方を実直に信じながら毎年スイカを育てているんです。」
「それに加えてバラの育成やサツマイモなど、新しい野菜も次々とやっているから、毎年毎年すっごく忙しい!」
と笑いながら答えてくれました。

新発売!ブラックジャックってどんなスイカ? 

今年のスイカの生育状況はというと、今年はスイカが大きく成長している最中で、収穫までまだ時間があるが、まだまだ大きくなるだろうと予想されています。
地温(地面の中の温度)が高いときは着果率が良く、実も大きくなりやすいそうで、今年は特にその傾向が強いようです。

そんな順調な生育状況の中で育っているのが、真っ黒な果皮と種が白くて極薄なことが特徴のブラックジャック。
変わった名前のスイカですが、ブラックジャックは生育においても特徴的で、実は雄しべに花粉が無く、自然に受粉が出来ない品種なんです。
なので、代わりに大玉で種ありのスイカの苗を隣に植えておいて、人工受粉させています。今回使っているのは「羅王ザスイート」という苗の花粉をつけてあげて受粉させていたようです。
一つの品種だけでは実がならない、それってまるでさくらんぼみたいだ…!
※さくらんぼの木は同じ品種同士では受粉しないという性質があるため、別の品種のさくらんぼの木も植えて受粉をさせています。

また、受粉用につける苗はどんな品種でも「ブラックジャック」になるようで、
受粉用のスイカの苗の品種も大玉で種ありのものなら何でもよいが、奥山さんの栽培方法で一番適しているのが「羅王ザスイート」だったとのこと。
ブラックジャック自体の生育は順調で、
「そろそろカラスや鳥が狙ってくるので裁縫糸を張ったり、日焼け防止のために藁を帽子のように被せる必要がありますね~。」
と語る奥山さん。何しろブラックジャック表面がは黒いので、日焼けの影響がすごいようです。
夏は紫外線による日焼けがお肌の大敵の季節ですが、果物にとってもそうなんですね…><;

スイカ作りの楽しさと厳しさ 美味しい作物を育てるために

青々としたスイカ畑を眺めながら
「スイカを叩くと実が詰まっているかどうかがわかるんです。詰まってると音が響くし、逆に実割れしていると響かないんです。」
「あと、あまりにも叩いた時の音が高いとまだスイカの実が若いということなので、音の高さを見ることも重要なんですよね。」
と、実際にスイカを叩きながら美味しいスイカの見分け方を教えてもらいました。
その僅かな違いを聞き分けられるのを目の当たりにして「まさに職人技…!」と思わず声が漏れる清川屋スタッフ。

また、スイカの実はもちろん周りの葉っぱも重要で、この周りの葉っぱが栄養を作るもとになるのだと奥山さんに教えてもらいました。
「なるべく葉っぱを立たせるように育てていますね。糖度が高いスイカを育てるには根っこの糖度が一番低いほうがいいんです。浸透圧の関係上、栄養分は低いところから高いところに流れるので根っこに糖度があると虫が寄ってきて実がダメになってしまうんですよ。」
「なので、畑表面周りの葉っぱが立っている=栄養が高いということなので理想に近づいた目印になるんです。何なら、種から芽が出た瞬間にその年のスイカがいけるか駄目かがわかるようなものなので、果てしない成功と失敗の繰り返しなんですよね。」

今回紹介した「ブラックジャック」も苗を作るところからが肝だったとのことで、
「去年のブラックジャックは苗作りに苦しんだので、今年はその苦しみに何とか耐えてもらえるような苗を作れたので…効果が出た、前進した、持ちこたえた!と思えました。」
「ちょっとずつちょっとずつ、自分の理想に近づいていくから農家は楽しい。」
「これからもいろいろなことをやりたい、最終的にここに化粧品工場をつくりたいが、それでもスイカ農家はやり続けるだろうなと思います。」

時たまに「いやですけどね農家なんて! 大変なんですもん(笑)」と挟みながらも、農家として真剣なコメントを沢山語ってくれた奥山さん。

そんな真剣な思いと試行錯誤の上で作られた「農穣 おく山」さんの【ブラックジャック】は7月29日(月)まで予約受付中です♪
奥山さんが手がけた、栄養たっぷり!夏の風物詩を是非お楽しみください(*^^*)

この記事で紹介した商品はこちら

ブラックジャック

真っ黒な果皮が特徴の「ブラックジャック」。
糖度は通常の大玉スイカと遜色がなく、さらに種が白くて極薄のため、そのまま食べても異物感がなく、健康面も問題ありません。
種を気にせず食べれるので、年配の方や小さなお子様にも喜ばれます。

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