前回のブログ:<清川屋座談会>いま、山形で起きていること。①
昨年は記録的な豪雨や猛暑に見舞われ、さくらんぼが「過去に例をみない凶作水準」となってしまった山形。
「自然を相手にしていることの大変さ」を痛感しながらも、お客様の暖かいお言葉により、緊急企画として「双子果のさくらんぼ」の販売を始めたりと、贈答用としての品質にこだわり続けていた清川屋としては初の試みとなりました。
特産品を通して見つめた、山形のいまとこれから。
そして、私たちにどんなことができるのか。引き続き、みなさんも一緒に考えていただけたらうれしいです。
<清川屋座談会>メンバーはこちら

●伊藤舞
山形県鶴岡市生まれ。
大学卒業後に都内勤務を経て、2011年にUターンし清川屋入社。商品部、新規出店プロジェクト統括などを経て2023年に代表取締役に就任。
最近、手前味噌をはじめた。

●和嶋宏樹
山形県酒田市生まれ。
秋田県立大学を卒業後、2005年4月に清川屋入社。庄内空港店、茶勘製菓工場長などを経て、通信販売部に在籍。青果物を中心に商品開発を担当。
去年は棒鱈煮づくりに挑戦した。

●朝比奈順子
山形県鶴岡市生まれ。
1992年に清川屋入社。総務部、社長室、イオン酒田南店などを経て、現在は通信販売部に在籍。おもに部内の運営管理を担当。
芋煮の〆はカレーうどん派。

●原田龍也
山形県酒田市生まれ。
大学卒業後に都内勤務を経て、2023年にUターンし清川屋入社。通信販売部に在籍。注文や発送、お問い合わせ対応の管理を担当。
笹巻は灰汁で煮込まない白派。
聞き手=清川屋カタログ編集部スタッフ
「できることなら、直接持っていきたいくらいです」

──これから、さくらんぼの栽培はどうなるのでしょうか。


農家の方々は、これまで積み重ねてきた経験を見直さなくてはいけないのかもしれません。
私たちとしてもできることはなにか。
過熟のさくらんぼを加工用として利用したり、規格外品の販売に向けた体制作りにも取り組んでいます。

商品化を目指し、原料加工のため県内にある就労支援事業所との連携を模索している。
──翌月の7月25日には豪雨で山形県内でも広い範囲で被害がありました。

刈屋梨の畑が水没し、大きな被害を受けました。収穫直前の実の高さまで汚水に浸かってしまい、水が引いたあともがれきが残っている状況でした。

社内で有志を募り、8月2日から4日の3日間にかけて、梨農家さんのところへがれきの撤去に行きました。
土砂をどけて、流木をどけたら、農業機械が埋まっていたんです。大きな鉄の塊です。こんなものまで流されてしまったのかと、愕然としました。
それひとつを片付けるだけで3時間掛かりました。

果樹はいちど根腐れを起こすと、元に戻すことはできません。私たちががれきを撤去したところで、樹木が助かるわけではありません。
でも、さくらんぼの高温障害や大雨被害を前にして、なんて言ったらいいんだろう……直感的に「やらなきゃいけない」と思ったんですよね。

植物の繊維などが絡まった汚泥を取り除きながら、撤去作業がすすめられた。

毎年きれいに実った果実にさらに選別を重ねたものを私たちは頂いています。
「今年の出来はどうですか?」と、収穫期だけ気にするんじゃなくて、1年を通して農家さんがどんな作業をして、どんなことを考えているのかをもっと知りたい。
商品をお客様にお届けするだけじゃなくて、この果実がどう育てられてきたのかを伝えること。
それも、私たちの使命だなと感じました。

電話注文を受けるスタッフたちからも、「農園を見たい」という声があがりましたね。
どんな農園で、どんな人がどのように育てているのか。目で見て実感できると、電話でも自分の言葉で伝えられますよね。「自分で伝える」といえば、できることなら、果物が収穫されたら、私が新幹線に乗ってお客様のところへ直接持って行きたいくらいなんです。
果物やお米は、新鮮なうちに頂くのが一番ですから。

そうですね。そんな気持ちもあって、昨年は「あじわう会」というイベントを東京で初めて開催しました。
おいしいものを携えて、私たちからお客様に直接会いに行こう、という交流企画です。初めての試みでしたが、関西のほうから足を運んでくださる方もいて、嬉しかったですね


そういえば、昨年はこんな声も聞きました。
ラ・フランスを毎年ご注文いただいている方に、そのお召し上がり方を伺ったところ、
「ダージリンやアッサムの紅茶と一緒に頂くと、香りが際立って贅沢な気持ちになりますよ」
と教えてくださったんです。さっそく私も試してみると、ラ・フランスってこんなにいい香りがするのかと驚きました。食べ慣れた特産品も、お客様から教わって、その魅力を再発見しました。

つなぐ立場としての役割を実感しましたね。たんにモノとお金を交換しているわけじゃない。
特産品を介して、山形とほかの地域、生産者とお客様、過去と未来をつないでいる。だからこそ、いま私たちがこの風土のなかで見聞きしたこと、感じたことを、もっと伝えていきたいですね。
2025年初春号カタログ掲載 座談会より