500余年続く黒川能を観能してきました
旧正月にあたる2月1日、
鶴岡市(旧櫛引町)黒川地区で黒川能が奉納上演される春日神社の例祭「王祇祭(おうぎさい)」が行われました。
王祇祭は、春日神社で最も重要なお祭り。
春日神社のご神体の王祇様を、神社の氏子から選んだ上座・下座それぞれの民家(当屋)にお迎えし、
能や狂言を夜を徹して披露します。
今回は下座の上演を観能してきました。
黒川能は春日神社の氏子によって500年余り続く郷土芸能。
昭和51年(1976年)、国の重要無形文化財に指定されています。
能を演じるシテ方には現在5つの流派が存在しますが、
例祭のなかの神事能として継承されてきたためか、
黒川能はそのどれにも属さず、独自の伝承を続けてきました。
通常、能を演じるのは能楽師ですが、
黒川能を演じるのは春日神社の氏子たち。
また、演式や演目、能面や装束なども古い様式が残されており、全国的にもとても珍しいのだそうです。
中には能楽五流にも残っていない、黒川能だけでしか観ることのできない演目もあるのだとか。
舞台には酒井家の家紋が。
実はこの黒川能、荘内藩領主であった酒井家の保護により今日まで維持されてきました。
現在、山形県の有形文化財に指定されている能の装束が21展あるそうですが、
そのほとんどが酒井藩から拝領したものなのだそう。
深いつながりを感じますね。
王祇祭では、幼い子どもが舞うかわいらしい「大地踏」をはじめ
式三番、能5番、狂言4番など演じられました。
こんなに小さい子がしっかりと舞っている姿に感動!
黒川能も幽玄でとても素晴らしかったです。
このお祭りは幕あいに豆腐を焼いた「凍み豆腐」がふるまわれることから
別名「とうふ祭り」とも呼ばれています。
二つのお椀がのった、お膳のふるまい。
こちらは「当屋豆腐」と呼ばれるもので、
上座と下座それぞれの味付けにされた焼き豆腐が入っています。
写真左側が上座のもので、黒川胡椒が効いた味。右側が下座の振る舞いで、お醤油とだしが濃い味わい。
どちらも当屋のお母さんたちが作ったもので、毎年変わらない伝統の味付けです。
能は夕方6時から翌朝5時まで約11時間。
夜通しの演能ですが、貴重な能楽ということもあり、毎年全国各地から観光客が訪れています。
能楽ファンも唸る黒川能は
3月の祈年祭や5月の例大祭、また各種イベントなどでも演能が行われています。
≫詳しくは黒川能保存会のサイトでご確認ください
庄内が誇る伝統文化、ぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。